ようやく観れた『ハケンアニメ!』映画監督の友人に勧められて鑑賞。
少年漫画のような展開で王道感があって良かった。
原作未読なんですが、辻村深月が監督や声優以外の仕事を知ることからはじめ様々な役割の方に取材を進めて制作に臨んだようで一般の人からするとこういう風になっているんだと楽しめました。吉岡里穂ちゃんかわいい。

公開 | 2022年 |
原作 | 辻村深月【ハケンアニメ!、傲慢と善良 、ツナグ】 |
監督 | 吉野耕平【沈黙の艦隊、水曜日が消えた】 |
作品 | 128分 |
興行収入 | 1.8億 |
出演 | 吉岡里帆 中村倫也 柄本佑 尾野真千子 工藤阿須加 小野花梨 高野麻里佳 前野朋哉 |

目次
【あらすじ】
『ハケンアニメ!』は、辻村深月の同名小説を原作とした実写映画で、2022年に公開されました。物語は、新人アニメ監督・斎藤瞳(吉岡里帆)が、自身初のTVアニメ『サウンドバック 奏の石』で“覇権アニメ”(そのシーズンで最も話題・人気を集めた作品)を目指す姿を描いています。
彼女のライバルは、かつて伝説的アニメを手がけたカリスマ監督・王子千晴(中村倫也)。王子は同じクールに新作『運命戦線リデルライト』を放送予定で、瞳はその王子作品と「真っ向勝負」を強いられます。
業界の裏側で起こるクリエイター同士のぶつかり合い、現場スタッフの葛藤、そして「アニメに命を賭ける」という情熱が、リアルな制作現場を通して描かれていきます。
【見どころ】

1. アニメ制作現場のリアル
映画は、企画会議、作画チェック、スケジュール遅延など、アニメ制作の裏側をかなりリアルに再現。
現場スタッフの疲弊と情熱が同時に感じられる演出が秀逸です。
2. “覇権”をめぐる情熱とプライド
斎藤瞳と王子千晴という、立場も経験も違う二人の監督が、それぞれのやり方でアニメに向き合う姿は、業界人だけでなくどんな職業にも通じる「仕事」への向き合い方を考えさせます。
3. 豪華な実在風アニメ
劇中に登場する『サウンドバック 奏の石』『運命戦線リデルライト』は、それぞれ実在のアニメスタジオが手がけた本格的な映像で、劇中作品とは思えない完成度。
特に『サウンドバック』の第1話の劇中上映シーンは、瞳の“本気”が伝わる感動的な場面です。
4. 個性豊かなキャラクターたち
プロデューサーや声優、制作進行、脚本家など、実際にアニメ業界にいるようなキャラクターたちが多数登場。それぞれが抱える思いや仕事観も丁寧に描かれており、群像劇としての見ごたえも。
【ネタバレ】

ここからは物語の核心に迫ります。
斎藤瞳は、王子千晴に「あなたのアニメを観て、監督になろうと決めた」と告白します。ところが、王子はそんな彼女に「自分はもうかつての情熱を失った」と語り、彼女の純粋さを逆に突き放そうとします。
しかし、瞳は信念を曲げず、スタッフとぶつかりながらも作品を完成させていきます。彼女の努力が実り、ついに『サウンドバック』の第一話が完成。放送初日、社内の上映会では涙を流すスタッフも。反響も上々で、視聴者からの評価も高く、「王子超え」さえ噂されるように。
一方、王子も刺激を受け、自身の作品にもう一度向き合い直します。結果、互いにリスペクトし合いながらも、真正面からぶつかり合う「好敵手」として、シーズンを盛り上げる存在になります。
【実はこんな設定がある】

・劇中アニメには本職のアニメーターが参加
『サウンドバック 奏の石』はProduction I.G、『リデルライト』はTRIGGERが制作しており、実際にプロの現場が関わっています。演出・音楽・キャラデザインも本気仕様で、アニメファンにとっては「もう少し観たい」と思えるクオリティ。
・タイトルの“ハケン”は“覇権”と“派遣”のダブルミーニング
原作でもそうですが、「覇権アニメを目指す派遣社員の監督」という意味を含んでいます。斎藤瞳は契約社員であり、なおかつ“覇権”という名誉を追う、という二重構造が巧妙。
【原作との違い】

映画は辻村深月の原作小説『ハケンアニメ!』をベースにしていますが、いくつかの変更点があります。
・原作では複数の主人公が章ごとに登場
小説は章ごとに視点が変わり、斎藤瞳・王子千晴・プロデューサー有科香屋子・声優群野葵らの物語が並行して描かれます。映画では瞳をメインに据えて、王子や有科との対比で構成されています。
・映像表現による迫力の違い
小説では文字でしか描けなかった「アニメ作品そのもの」が、映画では実際に映像化されているため、視聴者に直接訴えかけるインパクトが違います。これは映画ならではの強み。
【伏線とその回収】

・瞳がアニメ業界に入った動機 → 王子の作品だった
この設定は中盤で明かされ、物語後半の二人の衝突に深みを与えています。最終的に王子が自分の“失われた情熱”を瞳の姿に見る、という構造が美しい。
・プロデューサーの有科が厳しい理由 → 元クリエイターだった過去
有科は常に現場に厳しいが、それはかつて夢破れた自身の経験に基づくものと判明。だからこそ瞳に厳しくも期待を寄せていたという人間味ある伏線回収が印象的です。
・瞳の台詞「私が監督でよかったと思わせます」 → クライマックスでの証明
この言葉が有言実行されるのが『サウンドバック』第1話の完成と上映会のシーン。実際に観たスタッフの涙が、彼女の信念が現実となったことを証明しています。
【まとめ:『ハケンアニメ!』が伝えること】

『ハケンアニメ!』は、単なる業界モノではなく、「何かを信じて突き進むことの意味」を描いた作品です。
どんなに条件が悪くても、自分の信じるものを貫こうとする姿勢が、多くの観客の心を打ちます。
また、映画としての構成も非常に完成度が高く、実際のアニメと劇映画の融合という新たな表現にも挑戦した意欲作です。
アニメ業界を知らない人にも、「本気で何かを作るって、こういうことなんだ」と伝わる、普遍的なメッセージを持つ作品です。
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