【映画】仕掛けだらけの映画のラストはまさかの?”誰かの花”のあらすじとネタバレ感想。

横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年記念企画作品として選ばれた”誰かの花”

2021年の東京国際映画祭にもノミネートされましたね。

観終わった後に残る独特な感情。

こんなに色々なものを投げかけてくる作品も珍しい。

“誰かの花”

  • あらすじ
  • 見どころ
  • ネタバレ感想

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“誰かの花”

公開2021年 日本
監督奥田裕介
本編115分
出演カトウシンスケ
吉行和子
高橋長英 他

“誰かの花”あらすじ

”誰かの花”

孝秋(カトウシンスケ)が窓から見下ろすと道路をふらふらと歩いている父の忠義(高橋長英)が見えた。

部屋の冷蔵庫が少し開いており、中には眼鏡など忠義のものがしまわれていた。

ふらふらと歩いていた忠義は道路に飛び出しそうになりあわや事故になりかけたが、ヘルパーの長谷川(村上穂乃佳)と母・野村マチ(吉行和子)に連れられ無事に家に帰ってきた。

”誰かの花”

忠義はアルツハイマーを患い、孝秋と数年前に死んだ孝秋の兄との区別がつかなくなっていた。

ある風の強い日。

”誰かの花”

団地のベランダに置いてあった植木鉢が歩いていた住民に直撃する事故が起こる。

騒ぎを聞きつけ心配した孝秋が実家に駆けつけると、父は風呂場にいた。

なぜかベランダの窓が開いており、父の手袋には土がついていた。

植木鉢が落ちてきたのは本当に風のせいだったのか。

土だらけのベランダや手袋を見て不安になる孝秋にヘルパーの長谷川は伝えたいことがあった。

”誰かの花”

“誰かの花”3つの見どころ

”誰かの花”

1.真相は?

“誰かの花”は植木鉢が落ちた原因は父・忠義ではないのか?という孝秋の葛藤や、そのせいで人生を狂わされた家族の焦燥や憤りの話です。

では、植木鉢を落としたのは本当に父・忠義なのか?

これは、本編では語られません。

ベランダに残る土や、土のついた手袋を見て、孝秋やヘルパーの長谷川は忠義を疑いますが、その点の真実は語られません。

監督は、映画が終わった後、自分で考え、一緒に見た人がいるなら感想や考察をそれぞれ話してほしいと言っていました。

少し意地悪な気もしますが、最近の作品でこのタイプは珍しいですね。

監督はなかなかいい性格してます笑

2.至る所にある布石と遊び心

”誰かの花”

本編で重要なベランダの土を始め、様々な布石が登場します。

・落ちたと思われる植木鉢が一瞬映る(本当にここから風で落ちたのか。)

・反対に忠義が手を伸ばしても届くのか。

・妻・マチはすべて知っていたのか。(手袋を洗うシーンが意味深)

・迷子の猫の名前はフー。(姿は現れない。鳴き声だけ。)

・ひっくり返っていた虫を拾った棒で起こしてやる長谷川。(後日、その虫は死んでいた。)

・孝秋が職場で話しかけている人はなぜか一言も発しない。(黙々と作業を続ける)

ごく一部ですが、このような布石や疑問が多々現れます。

僕がいいなと思ったのは、迷子の猫。

声は聞こえるのに、姿は一切出てこない。

名前はフー。(団地の掲示板に張り紙があります。)

夜、猫(おそらくフー)が鳴いているシーンがあります。

この作品の定義として、責任の所在を問いかけているように聞こえました。

「誰が悪いと思う?」なんて。

3.優しさとは

誰かを思っての行動を優しさと定義するのであれば、この作品に登場する人物はみんな優しい。

ただ、そんなに単純な話ではない。

孝秋が長谷川を遠ざけたことは忠義を守ることなのか、自分を守りたいからなのか最初はわからなかった。

しかし、兄と間違われても受け入れ、一緒にダンスを踊ってみたり、面倒くさそうにしながらも定期的に顔を見せに来る孝秋の行動は優しさに違いない。

優しさからの行動と考えると、

岡部(篠原篤)が事件後、自宅に来た子供に会わなかったのも。

痴呆症の薬を飲んでいることを母さんには内緒にしてくれという忠義も。

ひっくり返った虫戻す長谷川も。

全部思いやりに感じるんですよね。

“誰かの花”ネタバレ感想

”誰かの花”

すごく心がざわざわする映画でした。

それはきっと自分の身に起こってもおかしくない話で、そのときに自分が正しい行動を取れるのか分からないから。

正しさって言葉がそもそも曖昧なもので、今作で一番の正義は誰かと考えると分からないし、全員が正しいと考える事も出来る。

自分の行動を伴うほどの思いやりを届けられる相手は限りがある。

孝秋にとっての両親だったり、岡部にとっての家族だったり。

その枠を超えると好奇心や一般論でしか触れ合えない人間の矮小さが見えて切なくなります。

”誰かの花”

奥田監督の前作「世界を変えなかった不確かな罪」でも感じられ、監督本人の話にもあった、

「誰かの思いやりで傷つく人がいる」

ということ。

今作にもその表現は残っていて、孝秋と長谷川の思いのベクトルのズレは生々しく観る人に責任や正義の在りかを問いかけてきます。

東京国際映画祭では惜しくも受賞は逃しましたが、渋谷ユーロスペースでは、再再再延長が決定するほどの人気ぶり。

渋谷ユーロスペース 誰かの花

時間を見つけては上映後にゲストを招いてのトークショーも勢力的に行われています。

カトウシンスケさん、吉行和子さん、篠原篤さん、など出演者を始め、

藤元明緒さん、中野量太さん、小路紘史さんなどの映画監督。

宇多丸さん(ラッパー・ラジオパーソナリティ)、鈴木圭介さん(ロックバンド「フラワーカンパニーズ」ボーカル)など音楽人。

興味を持ってくれた方をどんどん壇上にお招きするスタイルも新しいアプローチですね。

奥田監督はDVD化などは基本的には考えていないとのこと。

是非映画館で、今のうちに見てください!

今しかないかもしれません!

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