こんにちは。つむりです。
いやぁ、映画って本当にいいですねぇ。
「湯を沸かすほどの熱い愛」で日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞した「中野量太」監督の作品「長いお別れ」。
中野監督としては初めての原作がある監督作品だそうです。
脚本は自身で手掛けたそうですが、前作「湯を沸かすほどの熱い愛」と同じく家族のストーリー。
今回は「つながり」が一つのテーマになっているようにも思えます。
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目次
長いお別れ
公開 | 2019年5月31日 |
原作 | 中島京子『長いお別れ』 |
監督 | 中野量太 |
脚本 | 中野量太 |
本編 | 127分 |
出演 | 蒼井優 竹内結子 松原智恵子 山﨑努 北村有起哉 中村倫也 杉田雷麟 蒲田優惟人 |
中野監督の映画を作るときに大切にしているという二つのこと。
- “いま撮るべき映画を作りたい”
- “現状はキビしいけれど、それでも家族が懸命に助け合っていく姿が愛おしくて、温かくて、滑稽にも見えるような作品を作りたい”
という二つをこの原作に見出してオファーを受けた作品。
少しずつ記憶を失っていく父とのお別れまでの7年間。笑いながら、泣きながら、それでも覚悟を決めて前に進む家族の感動の物語です。
長いお別れ-あらすじ-
ある日、遊園地に年齢制限の為に、メリーゴーランドに乗れないでいる幼い2人の姉妹がいた。
係の人に大人と一緒でないと乗れないと言われ、姉は一人で歩いている初老の男性を見つけ声を掛ける。
2007年 秋
東家の母・曜子(松原智恵子)は娘たちに何度も電話をかけて家に帰るように伝えていた。
次女の芙美(蒼井優)は私生活がうまくいっておらず、別れることになった彼氏が実家に帰る日の朝だった。
料理が好きな芙美は、自分のカフェをオープンさせることを夢見ながらスーパーの惣菜コーナーで働いているが、思うような働きが出来ずに悩んでいた。
長女の今村麻里(竹内結子)は夫の新(北村有起哉)と息子の崇(杉田雷麟)(少年期:蒲田優惟人)と共にアメリカ在住。
英語が苦手なため、周りの人間とコミュニケーションが取れず、また夫との仲もうまくいっておらずモヤモヤとした日々を過ごしていた。
母のどうしても帰って来て欲しい理由は父・東昇平(山﨑努)の70歳の誕生日のお祝いと、あることを娘たちに伝えたいためだった。
久しぶりに4人が揃い、恒例のとんがり帽子をかぶり、芙美の作った料理をみんなで食べていた。
昇平は名前を間違えたり、誰の誕生日か分からなかったり、あげくの果てに怒鳴り声を上げたりと、娘からすると少し異様にも思えた。
本を貸すと怒鳴り、父が二階に上がったあと、「半年前から。」と曜子が話し、脳が縮んでいることを伝えた。昇平は認知症になっていた。
戸惑う2人だったが、追い打ちをかけるように昇平が芙美に面白いから読んでみろと渡してきた本は国語辞典だった。
2009年 夏
芙美は青空食堂として、キッチンカーでオーガニックカレーの販売を行っていたが思うように売り上げが上がらず悩んでいた。
陽子から芙美に電話があり、昇平の友人が亡くなりお通夜に一緒に行って欲しいと頼まれる。
昇平は、読み書きなどはまだ出来ているものの家にいるにも関わらずそろそろ帰りますと言ったり病状は少しずつ進行していた。
麻里は新の淡々とした言動に愛情を感じられず、また崇とのコミュニケーションもうまく取れず居心地が悪くなってきていた。
友人のお通夜に参列した昇平は、大学の頃同じ部活で汗を流した萩原と出会い話をするが噛み合わず、誰のお葬式に来たのかもよくわからないままだった。
昇平はデイサービスに通い始めた。
昇平はデイサービスにいっている時間は曜子にとっては息抜きの時間で、その日は崇と一緒に帰国していた麻里と買い物に出かけていた。
ところが、予定よりも早く昇平が帰ってきた。
留守番を任されていた崇のことを孫とは分からず、お互いに戸惑っていたがアメリカにいる崇の学校で漢字に人気があり、難しい漢字も書ける昇平を漢字マスターと呼び楽しい時間を過ごした。
崇の出した「エリザベス」を漢字で書いて欲しいというお願いに「襟挫邉洲」という当て字も書いてくれていた。しかし、崇がうたた寝をしている間に昇平がどこかへ行ってしまう。
曜子と麻里が帰宅し慌てて、崇や芙美に昇平を探しに行くように伝える。
なんとか昇平を見つけた崇は、一緒に歩いていた男性と三人で土手に座りこんでいた。その後、到着した芙美が、男性に挨拶をすると中学の同級生の磐田道彦(中村倫也)だった。
ふと、立ち上がった昇平が芙美の乗ってきたキッチンカーをのぞき込み、立派だ!と言うと、娘には教師になってほしかっただろうと感じていた芙美は褒められたことで嬉しさがこみ上げ、うまくいっていなかったが飲食業の道をまだ諦めたくないと思うようになった。
麻里の提案で、昇平の生まれた家に行くことにした。
いつも「帰ります」と言い家を出ていく昇平の帰りたい場所が、生まれ育った家ではないかと思い昇平・曜子・麻里・崇の4人で訪れた。
しかし、向かう道中も昇平は浮かない顔で、どこか不安そうだった。
今は甥っ子が住んでいるその家は、少し改装されているものの庭や景色はさほど変わっておらず、何かを思い出してくれるのかと期待したが、昇平は思ったような反応を示さなかった。
縁側にいた昇平が「この頃色んな事が遠い。」とつぶやき、「遠いのは寂しいいね。」と崇がこぼした。
アメリカにいる付き合っているはずのベスが別の男の子と写っている写真をブログに上げており、アメリカに帰ると言い出すと、昇平も帰ると言い始めてしまい望んでいた成果は得られなかった。
帰りの電車の中、昇平は曜子に「そろそろ僕の両親に曜子さんを紹介したい。」と言い始め、曜子は涙を流しながら頷いた。
2011年 春
昇平は本をさかさまにして読んでいた。
芙美は、道彦と暮らすようになり、道彦の母がやっている洋食屋「すずらん」で働いていた。道彦の母親は芙美を気に入っており、ゆくゆくは店を任せることまで考えていた。
そして、東日本大震災が日本を襲った。
原発の事故も重なり、日本で両親の暮らしを心配する麻里だったが、新は相変わらずマイペースで「今行っても出来ることもないんじゃないか」と言いすれ違いを感じる。この頃、崇ともうまくコミュニケーションが取れずにいた。
ある日、二人で買い物に出たとき昇平はポケットに商品を入れたまま店の外に出てしまい、店員に呼び止められる。
事務所で認知症の説明をしても、そう言う高齢の方多いんですよねと反省を促してきた。責められている曜子を見かねて、大声で「廊下に立ってなさい!」と店員に言う昇平。
芙美が迎えに来てくれることでなんとか帰れることになった。
デートの約束を道彦にキャンセルされ、その理由が娘に会えるとのことで不安に感じていた芙美は良くないと思いながらも道彦のあとを追いかけ遠くから見ていた。
道彦の娘にと用意しておいたクッキーを持ってきたが、そこへ道彦の母が現れ、自分が入れない空気を感じてしまう。ちょうど曜子からの連絡もあり実家に帰ることに。
用意していたクッキーは少し文句を言いながらも昇平が食べてくれた。
縁側で、クッキーを食べる父に芙美は「繋がらないって切ないね。」と辛さを吐き出す。すると、昇平は「くりまるな、ゆーっとするんだ。」と励ましてくれた。
言ってることは意味不明と言いながらもその温かさが芙美は涙が出るほど嬉しかった。
帰国した、麻里と芙美は昇平を施設に入れることも考えないとねと話してるときに、また昇平が居なくなったと連絡が来る。
渡しておいたGPSで居場所を突き止め追いかけて行くとそこは遊園地だった。
ふらふらと園内を歩く昇平に小さな女の子が寄ってきます。
3人が昇平を見つけると、年齢制限で乗れなかったメリーゴーランドに一緒に乗ってほしいというお願いを聞き、小さな女の子と一緒にメリーゴーランドに乗っているところだった。
ようやく見つけた場所で、曜子はあることを思い出した。
2人が小さい頃に遊園地に遊びにいったときに、雨が降りはじめ昇平が傘を持ってきてくれたことがあった。
普段はそんなことをするような人ではないが、その日は芙美が熱っぽかったのだった。
思い出したことを懐かしそうに話しているうちに雨が降り始め、迎えに来た3人は昇平の持ってきた傘をさして、メリーゴーランドに乗る昇平に手を振りながら眺めていた。
2013年 秋、そして冬
東京にオリンピックが決まった。
芙美は、道彦と別れ洋食屋も辞めて、昔働いていたスーパーの惣菜コーナーで働ており、そこでは社員にも誘われていたが、断っていた。
ある日、曜子が網膜剥離で手術が必要と診断された。昇平の世話があることで入院は出来ないと言っていたが、芙美の説得で手術を受けることにした。
麻里は学校からの連絡で崇が登校していないことを知った。帰ってきた新に相談したところ、崇に任せようと言い出す新に憤りを感じます。
家に帰り、昇平の世話をする芙美は1日だけでくたくたになり、改めて曜子の苦労を感じた。テレビ電話で麻里と芙美は現状報告をし合った。
手術を終え、医師の助言によりうつ伏せの状態の曜子に、家の現状を報告し、ショートステイになる昇平を見送る芙美。
後日、芙美は曜子の元へ行き、昇平が入院したことを伝える。
高熱が続き、検査を受けると大腿骨の骨折が見つかり、曜子が入院する下の階の病室に入院していると伝えると、曜子は居てもたってもいられず会いに行ってしまう。
病室に行くと昇平は優しく微笑んだ。
崇の先生に呼ばれ、不登校になる子供は両親の不仲が原因になることが多いと言われる。麻里は、本音を吐き出し、もっと話がしたい、もっとキスがしたいと勢い余って先生の前で新にキスをする。
昇平と包帯のとれた曜子と芙美がいる病室とアメリカにいる麻里とでテレビ電話で話をしていると、麻里がお父さんと二人にしてほしいといい、曜子と芙美は席を外す。
お父さん達みたいな夫婦になりたかったと泣き崩れる麻里の話を昇平は黙って聞いていた。そのまま寝てしまった麻里に帰ってきた崇がそっと上着を掛けてあげた。
まだ、テレビ電話が繋がっていることを知った崇は何も言わずに、手だけで昇平と挨拶を交わした。
昇平の状態が悪化した報告を受け、麻里はまた帰国することになる。少し雰囲気の変わった新が迎えに行くからと優しく送り出してくれた。
3人は病院で認知症の弊害として、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性を医師から伝えられる。
そこで昇平に人工呼吸器をつけるかどうかの選択を迫られる。
人工呼吸器をつければ呼吸はラクにはなるが、もう外すことが出来なくなるとのことだった。
病室で眠る昇平を囲んで、家族で話合う。
人工呼吸器を「付けなくてもいい」って言うんじゃないかな?という麻里と芙美に対して、「勝手なこと言わないで。」と言い、自分はもう決めていると涙ながらに言います。
そこへ崇からのメールが届きます。「生きてる限り生きててほしい。」
誕生日しようと、恒例のとんがり帽子を持ち出す芙美。4人で仲良く帽子をかぶって話をする。東家恒例のこのとんがり帽子を始めたのは実は昇平だった。
崇は校長に呼び出され、何でもいいから君のことを話してほしいと頼まれる。すると崇は祖父が亡くなったことを話し始める。
7年前から認知症を患っていたことを伝えると校長は自分の母親もそうであったことを伝え認知症は「The Long Goodbye」(ロンググッバイ)とも言うことを教えてくれた。
そして、祖父は漢字が得意で漢字マスターと呼んでいたことを話し、エリザベスを漢字で書かれたメモ書きを見せた後、部屋を立ち去ろうとします。
校長に、不登校と祖父の死は関係あるかと聞かれ、崇は無いと答える。また話を聞かせてくれと手を挙げた校長に崇も手を上げて部屋を出た。
廊下に1枚の葉っぱが落ちており崇はポケットにその葉っぱをしまい歩きだした。
長いお別れの意味
劇中の最後に校長先生が教えてくれましたね。
認知症は英語でThe Long Goodbyeとも言うと。
長いお別れはその直訳でした。
昇平が亡くなったとはっきりと分かるのはこのシーンなので言葉の意味がより一層重く響きましたね。
つながりと認知症
認知症を患い、「色んな事が遠い」状態になった昇平は、少しずつ色んなことを忘れていった。
しかし、「夫」であることも「父」であることも変わらなかったのは、曜子や麻里、芙美がいたから。
そこに「つながり」があったから。
でも、一番は、この人が大切だと覚えているから。
撮影前には、台本の裏に「認知症は、記憶は消えても心は消えない」との言葉を綴った。「お父さんの記憶は消えていくけれど、心は消えていない。それを重ねて描いているのが、この映画です」。中野量太監督
https://movie.walkerplus.com/
まとめ
誰でもそうなる可能性がある認知症。
でも、そうは思っても、身近な人がそうならないと自分のこととして考えるのは難しいものです。
「長いお別れ」を見ると、その大変さも伝わる(いや、実際はもっと大変なのは承知してますが)し正直、怖かったです。
でも、大切なものを何か感じていることが分かればそれは家族にとってきっと支えにもなりますね。
そして、中野監督に「芝居モンスター」と言わしめた、蒼井優さんと山﨑努さん二人のお芝居も必見です。
是非お楽しみください!
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